同僚から言われたこと
私はTOEICの点数を聞かれると正直に答えます。
855点と答えると結構な確率で勉強に費やした総時間数と勉強方法を聞かれます。
会社だと特にそうで、英語の勉強に意欲的な人だったりすると、世間話をするかのように休み時間や仕事の合間にオススメの勉強法について情報交換する機会が増えます。
そんなある日、
いつも会話に入ってこないAさんに周りに同僚がいないタイミングで呼び止められ、こう言われました。
もう英語の話しないでください。勉強したくないので。
前振もなく突然そう言われ、正直驚きました。
彼の顔はかろうじて笑っていましたが、寂しさと気まずさが混じったような、複雑な表情でした。
英語を勉強したくないと言ったこのAさん、明るくて爽やかで部署のムードメーカーです。
そのAさんが何でこんなことを言ったんだろうかと結構悩みました。今まで私の発言がストレスになっていたんだろうなと、正直申し訳ない気持ちにもなりました。
英語の勉強をしたくない人
私の勤めている会社では、最低でも半年に1回TOEICの受検が義務付けられています。
本人の意思やタイミングなど全く考慮せず、会社の会議室で行われる強制のテストです。
会社としては社員に英語を勉強してもらいたいのと、無料でTOEIC受検ができるということで英語学習の支援をしているとアピールしているんだと思います。
そもそもの話、業務で英語を使う社員はすでに自己学習でTOEIC600点〜800点を取得しています。
平日夜、自宅でオンライ英会話のレッスンを受け、週末は翻訳学校に通学している人もいます。
一方で、
業務で英語を使わない社員は勉強しません。必要がないから当然です。
業務で使うわけでもなく、海外出張に行く予定があるわけでもないのに、全員強制のTOEICテスト。
勉強しない社員のスコアは良くて250点ほどです。毎回点数が発表されるたびに200〜250点を自虐ネタにして、何とか乗り越えている姿を見てやるせない思いがこみ上げてきます。
そして、冒頭に紹介した私を呼び止め「勉強したくない」と言ったAさんも、テスト後に「やったー!235点取れた!前回から5点上がった!」と、自虐ネタにする方です。
普通に考えて、受けたくないテストを強制で受けさせられれば、「そりゃそうだよな」とAさんの自虐ネタには合点が行きます。
英語は全員に必要ですか?
そもそも、
全ての社員に英語力は必要でしょうか?
強制でTOEICを受けさせる必要があるでしょうか?
同じ状況に苦しんでいる人が日本中にいらっしゃると思いますが、個人的に私は全員が全員、英語が必要だとは思っていません。まして、業務時間中の強制受検は実施者の自己満足を得るための「言い訳」に利用されていると思います。
「今年も福利厚生とし、英語学習を推進し社内で無料のTOEICテストを実施しました」って人事や総務あたりが言ってそうな、、
人には好き嫌い、得手不得手があります。
英語ができれば得るものが大きいのは事実ですが、「勉強したくない人」「勉強が嫌いな人」に勉強を強制することはほぼ無理ですし、いくら報奨金を積もうが難しいと思います。
正直、日本の会社が英語習得に躍起になるのは日本が斜陽社会だからだと思います。
少子化、進む高齢化と労働人口減少、企業としては海外に利益を求めなければいけませんが、個人としてはまだ日本国内の内需で暮らせています。
グローバル化と叫ばれていても、内需で生きていける段階では、個人は本気で英語を習得しようとはならないと思います。
結局のところ、個人としては必要な時になって勉強すればよし、あらかじめ勉強するもよし、自由だと思います。
会社がTOEIC受検を強制しても、社員にとってはただの2時間の苦行タイムになるだけ。
会社が行うTOEIC強制受検は、英語を勉強する動機づけにならないのです。
日本企業の英語ノイローゼ
なぜ日本の企業の中には、社員たちの労働力を無駄にしてまで2時間のTOEIC試験を業務中に実施するのでしょうか。
英語を業務で使用しない社員に、半年に1回のペースでTOEICを強制で受けさせるのは、利益よりも損失が上回ると思います。
TOEICは試験時間2時間。
試験時間の前後を合わせると何だかんだで3時間は仕事中席を開けることになります。
もし社員が200人受験すれば600時間の損失です。これを年2回、つまり1200時間。
社員1人あたりの時間単価を1万円とした場合、年間1,200万円の経費です。
TOEICの受験費用や準備のためにかかった時間も加えればそれ以上の経費がかかることは明らかです。
果たして、この1,200万円に見合う価値が1年で回収できているのでしょうか。
答えは否。
社員に本気で英語力を身につけて欲しければ、このTOEIC強制受検の戦略はあまりにお粗末で誤った手段です。
日本人特有のとりあえず英語やらなきゃノイローゼに見えて仕方ありません。
社員の英語教育の理想
会社の中には英語の勉強を「したい人」「したくない人」がいます。
会社は社員の英語に対する意識調査を行った上で適切なアプローチを取る必要があると思います。
例えば、
- 中学英語レベルの社内レッスン(オンライン可)を開催する(修了時に試験あり)
- 高校英語レベルの社内レッスン(オンライン可)を開催する(修了時に試験あり)
- 中学、高校レベルの社内レッスンが修了したものにオンライン英会話の無料チケットを配布する
- 海外留学(短期でも長期でも)を希望する社員に有給休暇と留学費用を付与する
- 外部機関に委託せず、社内に英語学習推進の部署を設け、社員のニーズを聞き取り、企画を立案する
- 英語学習推進の部署は、社内で必要な専門用語集や海外出張裏話などの情報を蓄積し、絶えず社員に配布する。
- 国外英語圏にある支社、子会社、協力会社などと国内人材との間で人材のトレードを行う。
このような対応が会社からもらえれば、社員同士がもっと気楽に英語について話す機会が増えると思います。「オンライン英会話の先生オススメの人いる?」「今度短期留学することになったよ」など、気軽に話すことができれば勉強会のような小さなコミュニティが作られることもあると思います。
「英語できる人すごい」なんて価値観を壊せるくらい、社内で英語が自然に使われるようにしていく必要があると思います。
会社は、本当に社員の英語能力を向上してほしいと思うなら、TOEIC強制受検という投げやりな方法ではなく社員1人1人と向き合って、より具体的なサポートを自ら提供する必要があると思います。
「会社は学校じゃない!」なんて怒る人がいるかもしれませんが、社会の仕組みとして今の労働世代には「義務教育課程で使える英語が身につかなかった」が問題の根本だと思います。企業は社員の英語力を補完することは、利益をため込む前に必要な生き残るための投資だと思います。
まとめ
「勉強したくない人」にTOEICテストを強制するって、会社は本当にすごいことしてるな、と初めは強烈な違和感を感じました。
せめて、会社にとって英語がどうして必要なのか、英語が話せる人材が少なかったから営業段階で他社に取られた、などの具体例を見せながら正しく伝えることができれば、勉強を頑張る社員が増えると思います。
営業段階でというよりも、過去の実績が今後の受注に関係するのは分かっているはずなので、営業段階で強く推せる切り札にできるよう、社員を育てていく必要があると思います。
1つの仕事を次につなげるには人脈、そしてその人脈を作るのはコミュニケーション。コミュニケーションに欠かせないのが語学。とりわけ話す力。正確に聞き取れる耳の良さ。そして、その人の熱量、パワー。
人はエネルギーのあるところに引き寄せられます。世界共通です。
国外の仕事を単発で取れたと喜んでいるのではなく、次の仕事も取れるような信頼関係が築けるようなエネルギーのある人材がいることが、日本国内の企業が生き残ることができる数少ない道なのではないでしょうか。
その中で英語は大切なツール(道具)の1つに過ぎないこと。大切なツールは1つだけではない。それぞれ自分の気に入ったツールで勝負すればいい。もしツールを持っていないのなら、「英語」というツールを磨いてもいい。強制ではなく。
読みにくい文章を最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
では(^^)/~~~
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