今回は、2013年に全米を震撼させ、いまだ全容がわかっていない父親による一家全員殺人事件(Watts family)を取り上げます。警察のボディカメラ、取調室のカメラ、判決時の映像等から得た情報を元に、【事件内容】をまとめます。次回:この事件の【英単語】【文化の違い】をピックアップします
事件の簡単な流れ
加害者と被害者
加害者
夫 Christopher Lee Watts(クリス)33歳
被害者
妻 Shanann Cathryn Watts(シャノン)34歳
長女 Bella(ベラ)4歳
次女 Celeste(シシー)3歳
長男 Nico(ニコ)15週目。すでにニコと名付けられていた。
関係者
シャノンの友人 Nicole(ニコール)
事件詳細、判決、最後の証言
事件詳細
2013年8月13日、アメリカコロラド州で妊娠中の妻と娘2人がいなくなりました。妻シャノンと娘ベラとシシーが行方不明になった当日、夫クリスは朝からいつも通り職場に出勤していました。
自宅にもおらず連絡もが取れない3人のことを心配したシャノンの友人ニコールが警察に通報。職場から急遽自宅に戻ってきたクリスも行方を探しますが3人は見つかりません。シャノンの財布、携帯、常備薬など、普段彼女が必ず持ち歩くものが家に残されていました。その時、隣家住人が提供した防犯カメラの映像を全員で確認することになりました。その映像にはその朝50分かけて何かを車に積み込み、車で家を出ていくクリスの姿がありました。
関与を否定したクリスはすぐには逮捕されませんでした。クリスはテレビのインタビューに「早く帰ってきてくれ」と3人の無事の帰宅を訴えますが、2日後警察に逮捕されます。最終的にシャノンの殺害と死体遺棄(3人とも)を自供し、翌日にはシャノンとベラとシシー3人の遺体がクリスが証言した通りの場所で発見されました。
クリスの自供
事件の当日夜中の2時頃、出張帰りで空港から友人ニコールの運転する車で送られてシャノンが帰宅。帰宅して間もなくして、クリスとシャノンは口論に。シャノンが子どもたち2人を首を絞めて殺し、それを知ったクリスが怒りに任せてシャノンの首を絞めて殺害。夜が明ける前に3人の遺体を車に積み込み、自分の勤務する会社敷地に遺棄した。シャノンは浅く掘られた地中に埋め、ベラとシシーは別々のオイルタンクの中に投げ込んだ。
クリスの証言と解剖結果の相違点
取調べをしていた捜査官はクリスの証言を信じておらず、「子どもたちを殺したのはシャノンと世間に知らせることになっていいのか?」と何度もクリスに問います。クリスは「俺は殺してない」と何度も否定しました。ですが、遺体の解剖結果はクリスの証言をくつがえし、ベラとシシーは首を絞められたからではなく、鼻と口を押さえられての窒息死だったことがわかりました。クリスは裁判では証拠を突きつけられて子どもたちの殺害を認めましたが、「本当は何が起こったのか」を最後まで自分の口から語ることはありませんでした。
判決
クリスは2018年8月15日逮捕、8月21日起訴、2018年11月19日終身刑(仮釈放なし)の判決を受けました。コロラド州では死刑制度があり、今回の事件も死刑が求刑されて当然でしたが、シャノンの家族から「これ以上の死は望んでいない。命を奪うことを決めるのは神であり、我々ではない」という考えから回避されました。
判決後のクリスの証言
2019年2月19日、捜査官は刑務所に収監されているクリスのもとに向かい、最後にもう一度子どもたちの死の真相について証言を得ようとします。
裁判結審しているため、これ以上クリスの不利になることはない状況です。「子どもたちを殺したのはシャノンではない」と、「彼の口から」証言させる必要があったのです。シャノンの名誉を守るために。
捜査官は事件当日の話をクリスに聞きます。クリスは話し始めます。
クリス「彼女にもう愛してない」と言い、彼女の上にまたがった。
シャノン「降りて!赤ちゃんを傷つけてる!あなたは二度と子どもたちに会えないわよ!」
ここで、激昂しシャノンの首を絞めて殺害。物音でベラが起きてその現場を目撃したため、シャノンの遺体をシーツでくるみトラックに乗せ、子どもたち2人をつかんで車のバックシートに乗せた。
ベラ「ママは大丈夫?」
クリス「元気になるよ」と言い聞かせた。
死体遺棄場所まで1時間ほどかけて運転した。到着後、バックシートの子供たちはお互いにもたれかかるように寝ていた。シャノンを降ろして土に埋めた後、後部座席のシシーの口と鼻を手で押さえ窒息死させた。その遺体をオイルタンクの上に持って行き、フタを開けて投げ入れた。その様子を一部始終見ていたベラに最後まで「やめて!パパ!」と何度も懇願されたが、同様に口と鼻を手で押さえて窒息死させた。
こうして、クリスはようやく、シャノン、ベラ、シシー、お腹の子どもニコのを殺したのは自分だったと証言した。
しかし、世間から「どのバージョンが真実なの?」と言われてしまうほど、クリスの証言は二転三転したため、今もなお事件の全容、真実は誰にもわからないままとなっている。
まとめ
この事件は、実の父親による家族全員殺害という、とてもショッキングなものでした。
実は彼には関係を持ち始めて2ヶ月の愛人がいましたが、それがこのような残忍な犯行の動機になったとは誰にも理解できませんでした。
何より、子どもたちをオイルタンクに投げ入れるという信じられない遺棄方法と「シャノンが子どもたちを殺した」と、最後まで嘘の証言を続けたことで「Evil Monster 悪の怪物」や「EVIL IN HUMAN FORM 人間の姿をした怪物」とクリスは呼ばれることになりました。
最後に、4人のご冥福をお祈りします。
では。
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